MLインフルエンザ流行前線情報データーベースについて

2002 〜 2003年度版

このディレクトリは、日本の小児科医の有志によるインフルエンザの流行前線情報データーベースです。


概要
このページでは、Ped-ft, JPMLCなどの小児科医が多く参加するメーリングリスト(以下ML)に寄せられた迅速診断検査によるインフルエンザの発症情報を元にデーターベース(以下 DB)を作成し、Webページで公開しています。今シーズンで3回目です。

インフルエンザ・サーベイランスの情報(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html:国立感染症研究所・感染症情報センターホームページ)の2000年42週:10月16−22日( 2000/11/6掲載)では、「まとまった報告例のある都道府県でも、ウイルス分離や、迅速診断キットによるインフルエンザ感染の確認の情報は得られていない」と記載されています。一方、本DBに登録されるのは、迅速診断検査が実施された症例です(陰性例も登録を呼びかけておりますが、集計は別に行っております)。

本システムで公表されるデーターは、MLに参加している有志の先生方からの自主的な症例報告を集計したものであって、信任ある公共の医療機関からのコメントや報告ではありません。その特徴を了承したうえで、閲覧可能な情報をご自身の責任において診療にお役立て下さい。

本プロジェクトは、砂川富正先生(国立感染症研究所:感染症情報センター)による前述のMLで提案されたものです。その提案に基づいてWebデーターベースの設計と提供を当サイト管理者(西藤なるを)が行いました。

本プロジェクトのお問い合わせはなるべく参加されている各MLで質問されるとよいでしょう。またシステムの異常や操作上の不具合は、このサイト管理者に遠慮なくお問い合わせ下さい。

オンラインDBを活用すれば、有志のメンバーで容易になおかつ臨床に即役立つ情報源が構築可能なことが証明できることを期待しております。

本データーベースの情報収集方法について … 【必ずお読み下さい】

Ped-ft, JPMLCなどの小児科医が多く参加するMLに参加者に、本DBの存在と目的、そして登録方法を紹介し、その意義を理解できた先生方からの自主的な登録にお任せしております。地域ごとに一定の登録の担当を設けたり、症例数の義務などは全く設けておりません。前述のMLなどに参加しているという以外は、なんの義務や制約は行っておりません(MLにも参加されていないけれども登録に協力していてくださる先生もおられます)。

したがいまして、時間が空いているときは症例登録が可能ですが、忙しくなってくると登録ができなくなる可能性もあります。また特定の地域に熱心な先生がいたり、逆関心のある先生がいない地域の存在は予想されます。そして、迅速診断を行った症例のみの登録となっており、診断キットの供給不足もシーズン終わりには発生しております。したがいまして、本DBに集積された情報は、本当の流行と乖離している可能性を十分に考えておかなくてはなりません。

しかし今日インターネットが普及し、だれでも容易に情報提供(症例報告)が可能な時代となってきました。MLで呼びかけると全国に有志の先生方が大勢現れました。そうしますと、国内の人口の分布に近づいた報告が寄せられることが期待できました。例年、MLインフルエンザ流行情報データーベースを運用してみますと、後述いたしまが、事実、現行のサーベイランスと非常によく似た報告数のグラフを描く事がを本DBで示す事ができました。

また本DBの報告は迅速診断を行った症例に限っており、サーベイランスは臨床症状からの報告よりも診断では信憑性が高まっています。そして、タイプ(A,B型)やウイルス分離、症例の年齢性別、地域(市町村まで)をリアルタイムで集計し周知している、オンラインでユニークな情報源であります。

それでも現時点でこの情報収集のやり方が正しいと決まった訳ではありません。迅速診断キットの供給や、DBへ報告は任意である点などは、今後も本DBの運用方法を吟味していく必要があると認識しながら運営を行っております。

本データーベースのまとめ(mhlw報告との比較など)

昨シーズン(2001-2002)

http://www.children.or.jp/research/flu2001/

昨シーズンの本DBの運用期間は2001年12月17日〜2002年4月28日で、迅速診断で陰性例でも登録を呼びかけたこともあり、20182件の報告がありました。登録に協力してくださった先生は全国で375名(mailアドレスより)、平均53.8件の報告を頂きました。以下のグラフは、同シーズンの厚生労働省(mhlw)のインフルエンザ流行迅速把握情報の「一医療機関当たりの報告数」を赤い線で描き、当DBの報告数を青い線で描いたものです。シーズン前半でmhlwからの報告と大変よく似た推移をとっていることが判ります。ところが、赤い矢印で示している 2/6,2002より急に一致しなくなりました。同日は496件もの登録があり、インフルエンザの患者さんが大勢来院し、どの医療機関もシーズン中最も忙しい外来であったろうと想像します。その後も報告数の増減はmhlwとあまり一致せず、青い矢印以降は、迅速診断キットの不足も始まり、mhlwの報告数を上回ることはありませんでした。

[サーベイランスとの比較 2001-2002]

昨シーズンのDBでは「MyData」と呼称する登録者自身のデーターを集計表示・管理する機能・サービスを設けました。これにより報告するだけだったインフルエンザの発生状況が、当該医療機関の外来受診状況を把握することも可能となりました。運用終了後に、本DBに症例を登録していたおかげで研究会の発表に「MyData」がとても役立ったとお便りを頂きました。その他にもウイルス分離の結果も入力が可能となり同結果ももちろんWebでリアルタイム集計表示を行いました。

主に2001-2002年の運用について「第4回近畿外来小児科学研究会」で発表致しました。発表に使ったスライドが以下のURLより閲覧可能ですので、ぜひご覧下さい。

http://www.kodomo.co.jp/gakkai/20021117/

一昨シーズン(2000-2001)

http://www.children.or.jp/influenza/

一昨シーズンの当DB運用期間は、2000年11月1日から2001年4月29日までで、最終的に300近くの医療機関から報告を頂きました。入力されたインフルエンザ迅速診断検査結果陽性に基づく症例数は、8,581件でした。

診断から情報提供(入力)までに要した時間の中央値はおよそ0.7日で、現行の感染症サーベイランスでは、インフルエンザの診断から情報の報告、感染症情報センターからホームページ上への還元までがおよそ2−3週間であることと比較すると、約10−20倍の優れた迅速性を持つ運用であるといえます。そしてなによりも有志の実地医家の手によって構築されたことが最も評価されるのではないでしょうか。

2000−01シーズンは主にB型インフルエンザが主で流行の規模も小さくまた3月に流行のピークを迎えた、というシーズンででした。2001年第11週をピークとするこのシーズンのインフルエンザの流行状況は、「MLインフルエンザ前線データベース」と現行サーベイランス上で下の図のごとくほぼ一致しておりました。

 本データーベースの運用の問題点は、あくまでも自主的参加の医療機関からの情報に基づいたモニタリングで、代表性が均一でなかった点です。すなわち、それぞれの医療機関からの情報量・情報の質は均等ではなく、MLへの参加医療機関数が少ないために、情報提供のない県もありました。また、特にシーズン後半でインフルエンザ迅速診断検査結果の不安定性についての指摘もあり、これらは、今後データベースのあり方を考える場合に、慎重に検討していかねばなりません。

今シーズン(2002-2003)の抱負

前述しましたように本DBは、定量性や地域の代表性に問題がありながらも、大勢の先生方からの期待も大きく、冬が近づいてくると「今年もするの?」という問い合わせを多数頂いております。もちろんすべて「するよ!」とお答えしておりました。今シーズン以下を実現する機能・仕様と定めております。 もしも先生方の臨床に役立つのなら、という気持ちで、私の時間の余裕のある限り開発・運用に励んでいきたいと思います。問題点やアイデアがありましたら、遠慮なく管理者までご連絡下さい。可能な限り対応していきたいと考えております。

重要関連リンクサイト

小児科フリートークML(Ped-ft)
開業されている宝樹真理先生(たからぎ医院・東京都渋谷区)が主催されている小児科医のフリートークをテーマにしたML
http://www.ebisu.net/gairaiml.htm

日本小児科医電子メールカンファレンス(JPMLC)
東北大学医学部小児科の根東義明先生が主催されている各小児科分野の症例検討をテーマとしたML
http://jpmlc.med.tohoku.ac.jp/

感染症情報センター
このインフルエンザ流行データーベースのプロジェクトリーダーの砂川富正先生の所属されているセンターです。
http://idsc.nih.go.jp/index-rj.html
 

 

インフルエンザの流行が終わる頃の琵琶湖湖畔.
菜の花の咲き乱れる対岸は蓬莱山.

= MLインフルエンザ流行前線情報データーベース =

MLインフルエンザ流行前線情報DBプロジェクトリーダー:砂川富正 
MLインフルエンザ流行前線情報DB管理人:西藤なるを