MLインフルエンザ流行前線情報データーベースについて

2004 〜 2005年度版

このプロジェクトは日本の有志医師による
インフルエンザの流行前線情報データーベースです。


概要

「MLインフルエンザ流行前線情報データーベース」とは、Ped-ftJPMLCなどの小児科医が多く参加するメーリングリスト(以下ML)で有志を募り、迅速診断検査によるインフルエンザの発症を自主的にインターネット上のDBに報告し、国内・各地の流行状況を迅速に周知するプロジェクトです。2000年冬季から毎年実施しており、今シーズンで5回目です。

本システムで公表されるデーターは、MLに参加している有志の先生方からの自主的な症例報告を自動集計したものであって、信任ある公共の医療機関からのコメントや集計報告ではありません。その特徴を了承したうえで、閲覧可能な情報をご自身の責任においてお役立て下さい。

本プロジェクトは、砂川富正先生(国立感染症研究所感染症情報センター)による前述のMLで提案されたものです。その提案に基づいてWebデーターベースの設計と提供を当サイト管理者(西藤なるを)が行いました。本プロジェクトのお問い合わせは、管理者の負担を減らすためになるべく参加されている各MLで質問して下さい。またシステムの異常や操作上の不具合は、このサイト管理者に遠慮なくお問い合わせ下さい。

ITによって有志のメンバーで容易になおかつ臨床に即役立つ情報源が構築可能であると信じております。

本プロジェクトの背景

感染症法に基づくサーベイランスの報告は、臨床診断よる報告で情報還元までに約2週間を要しています。感染症の流行阻止には早期の対策が重要であり、特にインフルエンザ(flu)のように流行の早い感染症では、収集された情報の還元にさらなる速報性が診療現場から望まれています。 インターネット(INET)が普及しMLに参加する医療関係者は増えました。MLを通じて診療の様子やヒントなどの情報交換を行うことは日常的となりました。その交信の中で、fluの発生に関する投稿も目にします。そこで、MLでfluの診断状況などを報告し合えば、国内の流行状況を迅速に知る事ができるのではないかと、砂川富正先生(国立感染症研究所感染症情報センター)から前述のMLに提案があり、自主的にfluの診断状況・外来受診状況をMLに投稿する参加者が増えました。

特に報告は、当時普及し始めたインフルエンザの迅速診断を行った症例を求めておられました。これにより、臨床症状だけの診断よりもより確かなfluの発生をML参加者は知ることができました。

そうした投稿を見ていたサイト管理者(西藤なるを)は、インターネット上のDB(Web-DB)を準備して、自動集計する運用を提案しました。それが、このML_flu_DBの発端です。テーブルのタグを使って日本地図を描いて、報告数に応じて背景色の色を変えて行くアイデアもその時から実装しておりました。いまは大変詳しくていろいろな機能が備わったシステムとなりましたが、当時は大変簡単なWeb-DBシステムでした。

本データーベースの情報収集方法について … 【必ずお読み下さい】

Ped-ft, JPMLCなどの小児科医が多く参加するMLに参加者に、本DBの存在と目的、そして登録方法を紹介し、その意義を理解できた先生方からの自主的な報告にお任せしております。人口に応じて一定の有志医師を配置したり、報告の義務などは全く設けておりません。また、地域で有志の先生を募り、当地の流行状況を知らせ合いたいと、MLにも参加されていないけれども登録に協力していてくださる先生もおられます(ただし代表はいずれかのMLに参加されています)。

したがいまして、時間が空いているときは症例登録が可能ですが、忙しくなってくると登録ができなくなる可能性もあります。また特定の地域に熱心な先生がいたり、逆関心のある先生がいない地域の存在は予想されます。そして、迅速診断を行った症例のみの登録となっており、診断キットの供給不足もシーズン終わりには起こり得ます。つまり本DBに集積された情報は、本当の流行と乖離している可能性を十分に考えておかなくてはなりません。

しかしINETは普及しており誰でも容易に報告が可能となり、MLでプロジェクトの開始を伝えると毎年全県から有志の医師が自主的な報告を始めるようになり、調べてみると国内の発生数で比較すると現行のサーベイランスと非常に高い相関を持つことが分かりました。

また本DBの報告は迅速診断を行った症例に限っており、サーベイランスは臨床症状からの報告よりも診断では信憑性が高まっています。そして、タイプ(A,B型)やウイルス分離、症例の年齢性別、地域(市町村まで)をリアルタイムで集計し周知している、オンラインでユニークな情報源であります。

それでももちろんこの情報収集のやり方が正しいと決まった訳ではありません。迅速診断キットの供給や、DBへ報告は任意である点などは、今後も本DBの運用方法を吟味していく必要があると認識しながら運営を行っております。

有志医師から届いた本DB報告数とIDWRとの比較

以下の左側のグラフは、国立感染症研究所情報センターのWebサイトで公開されている週報(IDWR)のインフルエンザの報告数と、MLインフルエンザ流行前線情報DBの報告数を比較したグラフです。いづれも赤い棒線が当DBで青い折れ線グラフがIDWRを示しています。それぞれ右のグラフは、横軸に当DBの報告件数、縦軸にIDWRの報告件数を示しており、この二つの相関を見ています。いずれも相関係数が0.8125 〜 0.9935 と高い相関を認めております。

有志の医療機関からの任意の情報提供でありますが、それでも報告数の推移はIDWRと殆ど変わらないことが判りました。また、近似式から、当DBの報告件数に 31.797 〜 34.28倍するとIDWRの報告に近付くことも判りました。画像をクリックすると大きく表示されます。

大胆な仮説ですが、MLで募った有志の先生方に任意で報告を求めても、300名を越える意欲的に診断をされる先生方が集まれば、定点観測の報告とそれほど変わらないと言えるでしょうか。

本年度も診療の合間で無理をしないように本DBの運用にお付き合い下さい。それで大丈夫そうです。

2002 -2003年 冬季
[ml_flu_db_2002-2003_graph] [ml_flu_db_2002-2003_line]
近似式:y = 33.402x
相関係数:R^2 = 0.9935

2001 -2002年 冬季
[ml_flu_db_2001-2002_graph] [ml_flu_db_2001-2002_line]
近似式:y = 31.797x
相関係数:R^2 = 0.8125

2000 -2001年 冬季
[ml_flu_db_2000-2001_graph] [ml_flu_db_2000-2001_line]
近似式:y = 34.28x
相関係数:R^2 = 0.9384

今シーズン(2004-2005)の特徴

毎年冬が近づいてくると、大勢の先生方から「今年もするの?」という問い合わせを多数頂いております。もちろんすべて「するよ!」とお答えしておりました。今シーズンの本DBは以下の点で工夫したり、目標としました。

もしも先生方の臨床に役立つのなら、という気持ちで、私の時間の余裕のある限り開発・運用に励んでいきたいと思います。問題点やアイデアがありましたら、遠慮なく管理者までご連絡下さい。可能な限り対応していきたいと考えております。

重要関連リンクサイト

小児科フリートークML(Ped-ft)
開業されている宝樹真理先生(たからぎ医院・東京都渋谷区)が主催されている小児科医のフリートークをテーマにしたML
http://takaragi.umin.jp/pedft.htm

日本小児科医電子メールカンファレンス(JPMLC)
東北大学医学部小児科の根東義明先生が主催されている各小児科分野の症例検討をテーマとしたML
http://jpmlc.med.tohoku.ac.jp/

感染症情報センター
このインフルエンザ流行データーベースのプロジェクトリーダーの砂川富正先生の所属されているセンターです。
http://idsc.nih.go.jp/index-rj.html
 

 

インフルエンザの流行が終わる頃の琵琶湖湖畔.
菜の花の咲き乱れる対岸は蓬莱山.

= MLインフ ルエンザ流行前線情報データーベース =
MLインフルエンザ流行前線情報DB プロジェク トリーダー:砂川富正
MLインフルエンザ流行前線情報DB 管理人:西藤なるを